【青春18きっぷ対応】1日1本、宗谷本線全線を普通列車で約6時間の節約旅【レビュー】

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JR北海道宗谷本線には旭川から稚内への片方向のみ、1日1便約6時間をかけて運行されている普通列車が存在しています。今回はそんな便の全容を実体験をもとにレビューします。なお、普通列車なので青春18きっぷ対応!

目次

旭川から稚内への直通列車

旭川まで稚内までをつなぐ宗谷本線は、北海道のど真ん中から北端を結ぶ路線。”本線”と言う立派で仰々しい名前が付いていますが、地方交通線と言う名のローカル路線です。

同時に稚内に通じる唯一の鉄道路線であり、多くの「青春18きっぱー」もこの路線で北海道最北端、つまり日本最北端の稚内を目指すことでしょう。

そんな宗谷本線の旭川=稚内間ですが、1日に運行される本数は非常に少なく、さらに端から端を結ぶ列車は特急を除くと1日1便しかありません。それも旭川から稚内への片方向のみ

そんな唯一と言っていもいい列車の情報はこんな感じ。

便出発時間到着時間運賃
宗谷本線(稚内行)06:0312:075,940

朝6時に乗車して6時間もかかる上に、青春18きっぷじゃないと約6千円もかかる代物…。

ただ、移動後の観光も考えるとこの普通列車が一番効率が良い!

今回はそんな普通列車に乗車してきたのでレビューしたいと思います。

事前準備

朝6時に出発する訳ですから、それまでに駅に行ったり、きっぷを買ったりと色々とあります。

前泊したホテルは旭川駅近くにある「ホテルテトラ旭川駅前」でしたが荷物をまとめたり、ちょっと朝食を買いに行ったりとするために、起床したのは4時半ごろ。

割と始まる前からグロッキー。

駅前にある大通りを歩いていると、そこかしこにカラスが徘徊しているのが特徴的でした。

なお、旭川駅の西口は朝早い時間はやっていない様子。

始発が始まる前には開きますが、入場するころにはまだ開いていません。もちろん券売機も休止中。

そんな訳で東口へと回り込みました。

なお、今回は青春18きっぷを利用した旅ではなく、普通にきっぷを買う旅。

デメリットはもちろん料金が5,940円と高くつくことですが、メリットとしては特急も乗れるということ。

これはただでさえ本数の少ない宗谷本線で、何かあったときに特急を使って速やかに移動するための保険でもあります。

ちなみに料金はJR北海道価格(割増)で本州3社に比べれば距離にしては若干割高。

あとこのきっぷ、250kmに及ぶ距離を移動するので有効期間が3日もあります。無理に1日で移動せず、3日に分けて途中下車し、観光しつつ稚内を目指すのもありです。

全区間の様子

稚内=名寄

出発/06:03

さて、これから乗車するのは1番上にある稚内行。

さて、やってきたのはいかにも古そうな列車。実際に古いのですが…。

2両編成の列車はどちらの車両も国鉄車両。どちらかというと画像手前側の車両の方が新しいかな。

富士重工製で昭和55年とありますね。

種類は違っても規格は同じなので車両内の移動は問題なし。

なお、後述しますがこの2つの車両は行き先が異なります。

列車は緩やかに出発。旭川駅をでてしばらくは高架区間を走る様子。

市内を流れる牛朱別川。初見で確実に読めないこの”うしゅべつがわ”は石狩川水系なので最終的には日本海に注ぎ込みます。

ちなみにこちらの列車には以外にも多くの乗客がいました。

唯一の稚内直通列車でもあるので、推測ですが青春18きっぱーの皆さんでしょう。実際に旭川から乗り込んだメンツはほぼ変わることなく、最終の稚内まで一緒でした。

同志ともいえる彼らとこれから6時間の旅です。

旭川も郊外に近づいてくると田園風景の広がる景色が楽しめるようになってきます。

北海道と言えばこれ、麦のロール!

正式名称(?)は麦稈ロール(ばっかんろーる)といい、これらは家畜の寝床になるらしいです。

蘭留(らんる)に到着。次は塩狩。

この塩狩は読書の好きな方ならちょっと馴染みのあるところです。

ここからはレールに車輪をきしませながら峠を上っていきます。

険しい山間部に現れるのが塩狩駅。そして先ほど”峠”と申し上げた通り、ここは”塩狩峠”。

そうです、ここは著名な作家である三浦綾子氏の著作の1つ、「塩狩峠」の舞台となったあたりなのです。

「塩狩峠」は実話をもとに作られた作品であり、この塩狩峠で実際にあった事故がモデルになっています。中々凄惨な最期を迎える作品ですが、名作なので興味のある方は読んでみてください。

著:三浦綾子
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三浦綾子氏は旭川出身であり、この塩狩峠にも記念館があります。

正直行ってみたかったのですが、宗谷本線があまりにも本数が少なく、日程と時間の制約があったので残念ながらパスします。

その「塩狩峠」中の登場人物のモデルとなった長野政雄氏の記念碑。

塩狩峠を越え、しばらくはこのような地味かつ鬱蒼と緑の茂った森の中を進みます。

さて、町が見えてきました。

ここは和寒町。ちなみに「わっさむ」と読みます。

北海道と言い、沖縄と言い、初見で読めない地名ばっかり。

しばらくは開けた場所を走ります。こちらは次の士別市の士別駅。

瑞穂駅。もう駅舎というかプレハブというか…。

謎のタンクローリーを眺めながらしばらく並走。

名寄高校駅。ここは割と最近できた駅のようです。

そしてお隣は名寄駅。

宗谷本線の駅なの中でも比較的大きな駅であり、ここでは長めの停車時間となっています。

名寄=幌延

到着/07:40 出発/07:53

ここで長めの停車時間があるのは、列車の分離もあるから!

旭川から2両でやってきた列車ですが、ここで後方の1両は終わりです。私はここにきてこれを知ったのですが、なんとなく1両目に乗客が偏っていたのはこのせいだったのです。

皆さんよくご存じだこと。

もしかすると最初から案内があったかもしれませんが、強烈な睡眠不足により、ところどころ爆睡していたので聞き漏らしていたのかも。

解結作業も完了し、1両ワンマン列車ができあがりました。

こういう停車時間長めの駅ではリフレッシュがてら歩き回るのがよいです。ずっと座っているとかなり疲れてきますので。

ちなみに時刻表。左が旭川方面、右が稚内方面。

ここ名寄を境目にして明らかに運行形態が変わり、元から本数の少ない稚内方面の列車はさらに少なく…。

特急を入れても1日7本ですからね…。しかも特急を外すと、稚内に行くのは1日2本のみ。青春18きっぱーには過酷な地です。

小腹が空いたのでホームの自販機でソイジョイを調達し、小腹を満たしました。

さて、列車は再び出発。名寄川を越え、一路北へ。

名寄盆地を北上していきますとだんだんと先細りに…。

智恵文駅(ちえぶん)。駅舎…、駅舎?

プレハブのように見えるこれは貨車駅舎。かつて列車であった貨車を転用した駅舎であり、今となってはかなり残存数が少なくなっているようです。

智恵文駅を出発して目に入るのが、川のように見えて川ではない智恵文沼。

こちらは元々付近を流れる天塩川の流路の一部でしたが、昭和初期の治水工事により切り離されてできた人口の沼のようです。地元民には釣りスポットとして利用されているようです。

この小川は「ペンケニウプ川」。絶対に覚えられない。

山が近いのでそれほど広く感じませんが、美深(びふか)町の周辺にも小麦畑と麦稈ロールもあります。

ここ美深は名寄盆地のかなり北の端の方。次の音威子府を過ぎると、山間部の隙間をぬぐうように進みます。

ちなみに駅舎には観光案内所が入っているらしいです。

反対方向からやってきた、稚内発名寄行(05:21発08:46着)の普通列車とすれ違い。

稚内の始発は旭川よりもさらに40分も早いのか…。

士別あたりから天塩川とは並走してきましたが、美深から天塩平野に出るあたりまではさらにそばを走るようになります。

恩根内駅(おんねない)。駅舎が随分とかわいらしい。

それよりも隣にある崩れかけの家屋に目が行ってしまいますね。

駅から少し離れるとこのような雑草が生い茂るエリアに。

ここから曇っていた天気が少しずつ回復してきました。

恩根内=天塩川温泉駅間には、駅っぽいけど駅ではない豊清水信号場。

実は2021年まではれっきとした駅でしたが、採算が取れない駅なので閉鎖されてしまったことにより、今は列車入れ違いに利用される元駅になってしまっています。

谷を進む路線なので、風景にあまり奥行がなく、北海道らしさはあまり感じられません。

やがて街並みが見えてくればそこは音威子府。

こちらでも3分程度の停車時間がありますので、少し外に出てみます。

音威子府の読み方は「おといねっぷ」。”おとねいっぷ”なのか”おといねっぷ”なのか未だによく覚えられない駅名。

ちなみにここ音威子府駅はその昔、この宗谷本線の他に稚内まで伸びていた天北線のターミナル駅でもあり、その名残なのか駅の設備はしっかりしていました。

向かいの2,3番線ホームには可愛らしい”機関車”。

さて、列車は再び稚内に向けて出発。

大きくカーブをする天塩川。穏やかに流れる川の風景を楽しみながら、佐久まで天塩川まで西進。

またしても貨車駅舎。全般的に列車へのゲートの役割はきっぱり諦めている様子。

なお、民家もほぼないこの地ですが、この目の前を直進すると、エコミュージアムおさしまセンターと呼ばれる美術館があります。

北海道の旅をしていている際、麦稈ロールと同じくよく見かけるこの白い袋。

「ロールベールラップサイロ」と呼ばれているもので、内部には家畜の飼料が詰まっており、さらにその仕組みにより発酵を促進させる特殊なもののようです。

佐久に着く少し前。天気がどんどん良くなっていきましたね!

こちらは白樺でしょうか。防雪林的な役割もあるのでしょう。

次は麦稈ロール。

北海道の列車旅は田園風景ではなく、この麦稈ロールとロールベールラップサイロの風景を楽しむものです。

ちなみに麦稈ロールは農家から畜産農家に提供されますが、代わりに畜産農家から農家へは堆肥が提供される”持ちつ持たれつ”の関係なんだそう。

天塩中川。

天塩山地も通過し、ここから天塩平野の一部とも盆地ともいえる場所に入り、少ないながらも街が広がる風景が楽しめることでしょう。

綺麗に整地され、人の生活のある風景。広大なこの地に手を入れるのは大変なことでしょう。

こちらは糠南駅。簡素な作りのホームで、申し訳程度に駅舎っぽいものが…。

なお、駅のそばには集落もなく、何故駅があるんだろうかと思うくらいのところで、秘境駅の1つにもなっているそうです。

先ほどとは打って変わって景色の良い天塩川の風景。

南幌延もこの駅名標のボロボロ具合から哀愁が漂います。

そして少し大きめの集落が広がる幌延駅に到着。

幌延=稚内

到着/10:33 出発/10:56

幌延(ほろのべ)駅ではかなり長めで23分の停車時間があります。ここでもせっかくなので途中下車してブラブラ。

なお途中下車時には、信用と信頼で成り立っているのかあまりきっぷを見せろとは言われません。

駅舎は小綺麗になっており、JRの窓口は営業していなかったもののお土産が買える小さな売店が営業していました。

そのJRの窓口については週に1度の定休日のようだったようです。

駅舎外観。

ちなみに先ほど申し上げた売店はJRのロゴの下に見えている「ホロカル」というものなんですが、正式には”幌延町移住情報PR支援センター「ホロカル」”です。

移住情報提供がメインのようですが、特産品販売から観光案内までやっている町の出先機関みたいなものですね。

ここからは少し離れますが、日本海のそばに行けば風車が綺麗に立ち並ぶ様子が圧巻である「オトンルイ風力発電所」もあるサロベツ原野や、「トナカイ観光牧場」が観光地としておススメ。

ちなみに無料でレンタサイクルが借りられますが、中々距離があるので玉に瑕…。

気になる方は下記を参照ください。

▼(外部リンク)貸自転車(レンタサイクル)のご案内/北海道幌延町

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駅前のバス停。

謎の萌えキャラは「沿岸バス株式会社」のキャラクターの1人(どれかは良く分からない…)。

ちなみに列車の本数は1日6本。名寄の時刻表よりも1本少なく…。

それよりもこの時刻表が見にくいですね。平日・土日祝で分けているのかと思っていたら、左が発車時刻、右が到着時刻を表した時刻表。

なんとも独特でした…。

幌延は北緯45度の街のようです。

ちなみに大阪で34度、那覇は26度。海外で同緯度くらいなのがミュンヘンやパリ(48度)。

そう考えるとドイツってかなり寒そうなイメージになってきますね。実際には地形や気候もことなるので必ずしもそうではないですが。

さてさて、列車は再び出発。

前述の通り乗車メンバーは旭川からほぼ変更はありません。

しばらく走っていると下沼駅へ。

こちらも貨車駅舎。なんとも可愛らしい絵が描かれていますね!

ところでこの列車、冷房が付いていません。唯一の冷房設備は扇風機…。扇風機には「JNR」、つまり「日本国有鉄道」です。

国鉄時代の扇風機が現代もそのまま活用されています。整備も丁寧にされているのでしょうけども、物持ち良さすぎやしませんかね…。

北海道と言えども夏の暑い日は30℃近くある訳で。

雨が降っていない時は窓を半開にしておくことをおススメします。風が当たって若干涼めるというのが大きな理由ですが、窓を通さずに景色が見られるので余計なフィルターがかかりません。

閑話休題。

下沼を過ぎると日本海もより近くなってきますが、それが良く分かる様子がこちら。

画像中央右手に見える山が見えますでしょうか。こちらは地続きの先にある山ではなく、利尻島の利尻岳です。

豊富駅、ここでも数分程度停車。

いよいよ稚内まで1時間を切ってきました。

列車の後方から撮影した風景は、線路がどこまでも続くように思えるよう。

抜海駅を過ぎて少ししたところ。もう少しで海が見えそうなんですが中々見えない…。

お、少し海が見えてきましたね!

海岸線に最も近づくであろう部分は少し標高の高いところを走っており、少しの間景色を遮るものが無くなります。

ここでは列車を徐行してくれますので、このように稚内西海岸と利尻岳が良く見える風景が楽しめます

眺めの良い景色が終わると再び谷を走り、稚内市中心部のある宗谷湾側へと抜けます。

稚内南駅。終端稚内駅はあと1つ!

稚内半島の海辺に面したあたり、その内稚内南駅から稚内駅あたりにそって稚内の街が形成されているようです。

そして終点で日本最北端の駅である稚内駅に到着しました!

稚内駅の様子

朝早くの始発に乗車したのはもちろん昼から観光したいため。

観光の様子は別記事で書くとして、ここでは稚内駅の様子をお届けします。

このレールのそばにある259は、起点である旭川から数えて259kmを表すキロポスト。ついつい起点と終点ではこのキロポストを探してしまいますね。

なお、ホームには各都市からの距離が記載された看板が多く並びます。例えば東京からは1547.6km。

この西大山駅、3,068.4kmとありますがどこにあるかわかりますでしょうか。

それがあるのは鹿児島!

鹿児島を走る指宿枕崎線の駅であり、ここ稚内が最北端であるのに対して、西大山が最南端です。

広い意味での列車は沖縄にも走っていますので、「JRグループの中では」という前提ではありますが。

西大山駅については下記の記事も合わせてご覧ください。

▼JR最南端の駅西大山駅/鹿児島旅行

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先ほどの画像と順番は前後しますが出口の様子。

日本最北端の駅であることを表す案内板。ちなみに前述の西大山駅にはこれの”最南端”版が立っていました。

せっかくなので記念に貰ったきっぷ。通常の使用済印は味気ないものですが、ここで貰った印は随分と記念にしやすいものでした。これがもらえるのは稚内だけなのかJR北海道全体なのかは不明ですが。

駅舎を出るとその先にも線路。

これは旧駅舎の線路終端がここにあったことを記念として移設されたモニュメント。

さらにいうと、もともと稚内駅が終端ではなく、画像右手の白い建物左手にあった稚内桟橋駅が終端でした。

それもあってかモニュメントの先にもレールを模した模様になっています。

最北の駅稚内駅は、戦前サハリンが日本領だった頃の名残も残した、どこか歴史を感じるような駅でした!

まとめ

日本最北路線である宗谷本線を全線普通列車で乗り通しました。

6時間にも及ぶ旅は中々な忍耐力を要しますが、途中途中に見える景色は本土とは少し異なり、牧場的な風景が広がるステキな所!

なお、麦稈ロールは小麦の収穫に合わせてできるものなので、初夏時分、つまり7,8月によく見られる景色なんだそう。

この夏は避暑も兼ねて、北海道宗谷本線の旅に出かけてみてはいかがでしょうか。

旅程一覧

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